かたつむりさん、こんにちは! 1期治療は抑制矯正治療と言われ、成長期の子供で悪化する可能性のある要素を取り除いて、上下のあごの成長を正常な軌道に乗せるのが目的の治療です。
最初にリンガルアーチで前歯の咬み合わせを正常に戻したのは、前歯の咬み合わせが反対のままでは、これから起こる身長がぐんぐん伸びる第二次成長期に、下あごを抑えるものは何もないために、一気に骨格性の要素が悪化する可能性があるからです。
これは、上下のあごの成長が異なるパターンであることに起因しています。上あごは耳鼻科の先生に言わせれば鼻の底の骨に当たり、脳が入っている脳頭蓋とくっついています。脳の大きさの成長は小学校3年生くらいでほとんどできあがります。よく「子供顔」「大人顔」と言われますが、この違いは脳頭蓋に対して顔面骨が小さい状態を子供顔、脳頭蓋の成長の後に顔面骨と言われる鼻、上顎、下顎が大きくなって「大人顔」になって行きます。
そこで、上あごは鼻とともに脳頭蓋にくっついていますので、脳神経の成長に引っ張られるために、小学校3年生くらいまでに前後的な位置は決まり、その後は下方への成長の主になります。
一方、下あごは手足の骨の同じ一般系になり、男の子の場合は小学校6年生から中学校1年生にかけて急激に身長が伸びる時期に一緒に大きくなります。 この上下のあごの成長方向の違いが、反対咬合が思春期性の成長期の間に骨格性に増悪する原因なのです。
さて、それでは下あごの成長を確実に抑える方法があるかと言うと、現時点ではないという研究論文が多いのが現状です。従って、前歯の咬み合わせを正常へ改善して、たとえ骨格性の可能性があっても永久歯が生えるまでしばらく観察するしか方法がないのです。
私の場合には、歯ではなく、上あごを前方へ移動する「上顎前方牽引装置」という方法を使用して、あらかじめ上下の顎の位置自体を修正しておく事ができますが、この装置はあまり一般的なものではありません。
上あごの幅を広げるのは、骨格性の反対咬合の治療とはあまり関係ありません。 上の顎の骨の幅は意外に簡単に広げることができ、歯を並べるスペースが不足している場合にはある程度スペースを作る事ができます。このため、担当医は上あごの幅を拡大しましょうと言ったのだと思います。ただし、この上あごの側方拡大を行っても全部の歯にブラケットを装着する2期治療は、ほとんどの方で必要ですし、歯を抜いて治療する確率も低下はしますが、とても歯を抜かない約束まではできません。
これでは、何のために上あごの幅を拡大するのかと言われてもの仕方ないと思います。 この事を考えて、担当医は今は経過観察のみで八重歯や曲がった歯になった場合はU期治療時に行えばよいと言ったのだと思います。 担当医の発言が結論のみ言ったために、かたつむりさんには不信感をもたれてしまったようですが、担当医の考え方はとてもオーソドックスなものですので、ご安心下さい。
このように、できるだけ効率のよい最大限の効果が出る治療を毎回の来院ごとに考えながらその時々の最適な診断を行い方法論(治療方法)という回答を出すのが我々矯正歯科医の臨床力です。
患者さんにすれば「毎回少しづつ言う事が違う」と思われるかも知れませんし、「せっかくこの時期から治療を開始しているのだから今のうちに何かしておいた方が後々良いのではないか」と考えられるのは、もっともと思います。
毎回の診療時に数年後に現時点を振り返った時に、もっとも適切な治療だったと言えるかどうか、治療の進路を微調整しながら拝見しております。この点を患者様もご理解の上、説明が足りない事もあると思いますので、「なぜですか?」と聞き返していただけると助かります。ご説明はそれほど時間のかかることではありませんので。
また何か疑問な事がありましたら、書き込みお待ちしております。
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