鈴木さん、はじめまして!矯正治療に対する期待が滲み出る書き込みに、身も心も引き締まる想いです。しかし、30代後半での治療開始は、まだまだお若いですよ!!
さて、「前歯二本20年程前に神経を抜いており根元まで削り銀色の土台を入れそこに差し歯」とのことですが、これは、歯の根より歯冠と言われる、歯茎から上に露出している部分の修復「補綴」と言われる治療です。 根の神経の治療は虫歯が波及して感染している場合には、感染した神経を含む「歯髄」と言われる組織は除去して、感染した歯質を一層除去して細菌感染を完全に防ぐ治療を行ないます。このような神経の治療を行なった上で、この神経のあった部分の穴に根官充填剤と言われる材料を充填し、その上部に土台となる歯台構築という心棒を立てて、この芯に歯の形をした金属やセラミックなどの冠(クラウン)を被せるのが歯冠補綴です。
鈴木さんも、上記の治療を20年以上前に行なったわけです。 しかし、これらの根官治療と根幹充填、さらには歯台構築と歯冠補綴を行なったからと言って「弱い歯」というのは、少し違います。確かに鈴木さんのおっしゃる通り、御自分の歯の歯冠部分と歯髄の部分は人工物で置き換えられていますが、元の御自分の歯と比較してひどく劣っているワケでありませんし、弱くなっているワケでもありません。 さらに、根の表面にある「歯根膜」は健全です。この「歯根膜」の中で歯の根の周囲の歯槽骨が吸収されたり、歯槽骨が新しく作られたりして、歯が移動したように見えるわけです。
従って、我々矯正歯科医が歯を移動する場合にもっとも重要な部分がこの歯根膜です。 この歯根膜さえ健全であれば、歯の移動に支障はありません。 前記した、根管治療や歯冠補綴が行なわれていても、同様にまったく歯の移動の障害にはなりません。 30代、40代の患者さんでは、どうしてもすでに治療がされている歯が多くなりますが、このような歯を移動する場合にも心配はいりません。 気をつけておかなかればならないのは、歯周病といわれるいわゆる「歯槽膿ろう」です。この場合には歯茎と歯根の間に入り込んだ歯周病菌が、歯根膜を上部から深い部分に向かって破壊して行きますので、重篤になると歯の移動が困難になります、また、交通事故や怪我による外傷歯もこの衝撃で歯根膜が壊れている場合があり要注意です。 従って、文面を拝見する限り鈴木さんの場合には、あまり心配されなくても大丈夫と思います。 特に、矯正の良いドクターに巡り会えたようで、ホントに良かったです。安心して治療を続けて下さい。
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